建設キャリアアップシステムの基本と登録(事業者、技能者)方法を解説

この記事は、建設キャリアアップシステムの登録を検討している建設業者の方に向けて解説しています。
建設キャリアアップシステムは2019年に始まった制度です。少しずつ建設業界に浸透してきましたがまだ全く知らないという方もいるでしょう。
基礎となる知識から、具体的な導入方法まで解説します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
人手不足と高齢化が進む建設業では、若者の定着が喫緊の課題です。
拘束時間の長さと給与水準の低さが、若者の定着を拒む要因の一つとされています。就業率を上げるには、能力や実績が正しく評価される業界に変わることが必要です。
建設キャリアアップシステムを導入することで、就労管理や適切な施工経験の積み上げが可能になり、キャリア形成がしやすくなります。これにより、若者に対して「建設業は努力すれば稼げるようになる」とアピールできます。
- 適正な就労管理(長時間労働・サービス残業の是正、社会保険加入の徹底)
→ 業界の健全さや時間当たりの効率を重視する若者にアピール - 人材の育成の意識を企業に根付かせる
→ 若者がキャリア形成しやすく将来計画を立てやすくなる - 能力や実績に基づく適正な評価による処遇の改善
→ 努力が評価に結びつくことで、やりがいを高める
建設キャリアアップシステムは、CCUSとも呼ばれています。
CCUSは Construction Career Up System の頭文字を取って並べたものです。
建設キャリアアップシステムの利用者は徐々に増加している

約2万人の技能者がひと月ごとに登録し、2019年からの累計で技能者登録数は150万人を超えました。
国は全ての技能者が建設キャリアアップシステムに登録することを目指すことを掲げています。
経営事項審査の加点項目にも加えられるなど、建設キャリアアップシステムの重要性が高まっています。今後はさらに普及していくことでしょう。
建設キャリアアップシステムの手続きの流れ
建設キャリアアップシステムの登録から利用までの流れを以下に示します。
事業者(会社)の登録を行い、その後に技能者(社員)の登録をします。技能者の登録が済むとカードが送られてきます。その後、事業者と技能者をシステム上で紐付けします。
主な登録情報
- 商号、所在地、業種など
- 保有資格、社会保険加入状況など
現場、工事内容などの工事の概要、契約情報を元請が登録。
工事に入る技能者情報(氏名、職種、職長や班長などの立場)を下請が登録
誰(勤め先、保有資格など)がどの期間工事に入るかを事前に決めます。
工事現場にカードリーダーなどの端末が設置され、技能者はカードタッチして就業実績を蓄積します。蓄積された就業履歴、保有資格、職長・班長の経験年数に応じて技能者のレベル※が上がっていきます。
この情報はシステム上に残ります。積み重ねた経験が明確になり能力や経験に見合った評価と処遇が受けられることが期待されます。
※ レベルは1から始まり最大で4
建設キャリアアップシステム導入のメリット
建設キャリアアップシステムの技能者のメリット
建設業界は自身のキャリアを客観的に示す方法がありませんでした。なので、高い技能や経験があっても、上長のさじ加減で評価が決まることが多いのではないでしょうか。
建設キャリアアップシステムは工事の履歴や保有資格、マネジメント経験を見える化します。プロ野球選手が打率や打点、防御率などの実績に基づいて評価されるように、技能者が能力や経験、パフォーマンスに応じて評価される状態を目指しています。
国土交通省が技能者のレベルに応じた職種ごとの賃金の目安を公開しています。以下はその一例です。
呼称 | 賃金目安 | ||
レベル4 | レベル3 | レベル2 | |
内装仕上技能者 | 554~867 万円 | 486~811 万円 | 438~720 万円 |
基礎ぐい工事技能者 | 509~849 万円 | 425~775 万円 | 408~678 万円 |
レベル別年収は、公共事業労務費調査において把握された技能者の実態を踏まえて、各技能者の経験や資格が評価された場合に相当するレベルに応じて、公共工事設計労務単価の算定と同等に必要な費用を反映した上で、年収額(週休2日を確保した労働日数:234日)を試算したもの。
建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表(令和5年6月16日 不動産・建設経済局 建設市場整備課)
制度の定着には時間がかかると思われます。今後この制度が基準となれば、技能者のキャリアを適切に評価する会社に優秀な人材が集まるようになるでしょう。
建設キャリアアップシステムを利用する事業者のメリット
ここまでは主に技能者に関する情報を述べてきました。事業者が建設キャリアアップシステムを利用すると以下のような利点が考えられます。
- 技能者の保有資格や社会保険などの情報管理の効率化
データがデジタル処理されるため、元請業者は効率的なデータ管理ができるようになります。 - 事業者の施工能力の見える化
施工能力の見える化により、優秀な人材が社内にいると会社の施工能力が高く評価されます。
→ 元請と価格以外で交渉できるカードができる

建設キャリアアップシステムの登録は行政書士へ
建設キャリアアップシステムの登録は、必要な資料の収集やデータの変換、そして独特な登録作業まで多大な手間を要します。
煩雑な作業に、大切な本業の時間を割くのはもったいないと考えています。
建設業の皆様には、ぜひ本業の工事に全力を注いでいただきたい。そのために、当事務所では登録代行を承っています。
貴社の事業がスムーズに進むよう、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
建設キャリアアップシステムの登録の概要
ここまで建設キャリアアップシステムの概要と導入方法を解説してきました。
ここからは具体的な登録の方法を説明していきます。
登録には「インターネット申請」と、「認定登録機関」で申請する方法があります。
この記事では、インターネット申請について解説します。
認定登録機関でしか手続きできないケース
次の方は、認定登録機関でしか申請できません
- 運転免許証などの写真付きの本人確認書類がない
- 本人確認書類を提出できない
お近くの機関にお問い合わせください。こちら
事業者から先に登録を
建設キャリアアップシステムは「事業者(会社)の登録」と「技能者(人)の登録」があります。
初めて登録される法人の方、個人事業主の方は、事業者登録から進めてください。
事業者の登録後に技能者登録をして、会社と人の情報をシステム上で紐付けします。
先に会社をつくってから人を雇用する感じですね。

従業員の方が自分で登録される場合は、技能者登録のみでOKです。
建設キャリアアップシステムの登録に必要な費用
事業者登録料(※消費税を含む)
資本金 | 登録料・更新料 | 振り込み方法 |
---|---|---|
一人親方 | 0円 | 払込票のみ |
一人親方以外の個人事業主 | 6,000円 | |
500万円未満 | 6,000円 | |
500万円以上、1,000万円未満 | 12,000円 | |
1,000万円以上、2,000万円未満 | 24,000円 | |
2,000万円以上、5,000万円未満 | 48,000円 | |
5,000万円以上、1億円未満 | 60,000円 | 銀行振込のみ |
1億円以上、3億円未満 | 120,000円 | |
3億円以上、10億円未満 | 240,000円 | |
10億円以上、50億円未満 | 480,000円 | |
50億円以上、100億円未満 | 600,000円 | |
100億円以上、500億円未満 | 1,200,000円 | |
500億円以上 | 2,400,000円 |
一人親方の事業者登録費用は0円です。
管理者ID利用料
IDひとつ当たり:11,400円(一人親方は2,400円)
事業者がCCUSにおいて、事業者情報を管理するために必要な管理者IDの費用です。
期限は1年なので毎年費用がかかります。
技能者登録料
申請方法 | 内容 | 登録料 |
---|---|---|
インターネット申請 | 簡略型 | 2,500円(税込) |
詳細型 | 4,900円(税込) | |
認定機関申請 | 詳細型 | 4,900円(税込) |
- 簡略型・・・とりあえず就業履歴の蓄積だけをすれば良い
- 詳細型・・・能力判定を受けてレベルアップを目的とする
今後、建設キャリアアップシステムが普及すること考えると、「詳細型」での登録をお勧めします。
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建設キャリアアップシステムの事業者登録
建設キャリアアップシステムの事業者登録に必要な書類
建設キャリアアップシステムのインターネット申請には、JPG形式で提出する必要があります。
JPGファイルは、書類をスマートフォンのカメラで撮影するのが最も身近な方法です。
その他にはキャナで取り込む方法もあります。スキャナは初期設定ではPDF形式で取り込まれることが多いです。取り込む前に設定をご確認ください。
建設キャリアアップシステムにおける事業者の確認書類
条件 | 必要書類 |
---|---|
建設業許可がある場合 | 建設業許可証明書 または 建設業許可証明書直近に変更届を提出している場合は変更届の写しも。 |
建設業許可がない法人 | 事業税の確定申告書受付印があり1年以内のもの または 納税証明書+ 履歴事項全部証明書 |
建設業許可がない個人事業主、一人親方 | 個人事業の開始届受付印があり1年以内のもの または 納税証明書所得税、事業税の納税証明書のいずれか または 所得税の確定申告書受付印があり1年以内のもの |
建設キャリアアップシステムにおける資本金の証明書類
条件 | 必要書類 |
---|---|
建設業許可がある法人 | 提出不要 許可データから資本金が確認されます。 ※直近に資本金額の変更をした場合は、「建設業許可なし」として申請し、登録完了後に建設業許可ありに変更する |
建設業許可がない法人 | 提出が必要 |
個人事業主 | 提出不要(個人事業主の事業者登録料は一律で6,000円、一人親方の事業者登録料は0円) |
前述の通り、事業者登録料は資本金に応じて異なります。資本金を確認するための書類を提出します。具体的には、「履歴事項全部証明書」、「現在事項全部証明書」、「事業税の確定申告書」が該当します。
建設キャリアアップシステムにおける社会保険の証明書類
健康保険
健康保険加入証明書類(写し)
法人、5人以上の事業者:加入義務
国保組合(建設国保、土建保など)に加入:適用除外
年金保険
以下うちのいずれかひとつ
- 領収済証等(写し)出納印あり
- 社会保険料納入証明書(写し)証明者の印あり
- 健康保険・厚生年金保険用確認願(写し)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬月額決定通知書(写し)
- 健康保険/厚生年金保険 被保険者賞与支払届(写し)
法人、5人以上の事業者:厚生年金
5人未満の事業主:適用除外
雇用保険
以下うちのいずれかひとつ
- 雇用保険適用事業所設置届事業主事業所各種変更届事業主控(写し)受領印あり
- 納付書・領収証書(写し)出納印あり
- 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(写し)受付印あり
- 労働保険料等納入通知書(写し)
常用労働者1人~:加入義務
雇用なし:適用除外
建設業退職金共済制度加入証明書類(加入者のみ)
建設業退職金共済契約者証(写し)
中小企業退職金共済制度加入証明書類(加入者のみ)
中小企業退職金共済者証(写し)
労災保険加入証明書類(加入者のみ)
・労働者災害補償保険(写し)
または
・労災保険特別加入 加入証(写し)
※労災保険加入証明書類は、通常の労災保険とは異なります。
建設キャリアアップシステムの事業者登録の各ステップごとの入力内容
- 建設業許可番号や種別(一般、特定)を入力
- 商号または名称
- 代表者名
- 所在地
- 法人情報、建設業以外の事業の有無
- 建設業許可証明書または建設業許可通知書データを添付(建設業許可がある場合)
- 事業税の確定申告書または納税証明書、または履歴事項全部証明書データを添付(建設業許可がない場合)
- 資本金情報:建設業許可がない場合は、資本金額個人事業主、一人親方は0円を入力し資本金確認書類データを添付
- 完成工事高情報 売上高(申込前年度)と完成工事高(申込前年度)を入力
建設業許可がある場合は2〜5、8、9の情報が自動で読み込まれます。
氏名、住所、連絡先などを入力
※登録責任者:事業者情報のシステム管理者。CCUSの運営者との窓口になる人のこと。
土木、建築などの業種に関する情報を入力します。建設業許可がある場合は自動で入力されます。
建設業許可がある場合だけ表示されます。
加入状況、事業所整理記号、事業所番号、健康保険組合有無、健康保険組合名称など、加入状況に応じて入力します。
健康保険加入証明書データを添付
加入状況、事業所整理記号、事業所番号を加入状況に応じて入力します。
年金保険加入証明書データを添付
加入状況、事業所整理記号を加入状況に応じて入力します。
雇用保険加入証明書データを添付
建設業退職金共済制度、中小企業退職金共済制度、労災保険特別加入、CI-NET、電子証明書の種類、主要取引先、表彰履歴、所属団体
これらの情報を加入状況に応じて入力します。
申請情報を確認した後に登録申請します。
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建設キャリアアップシステムの技能者登録
建設キャリアアップシステムの技能者登録に必要な書類
建設キャリアアップシステムの技能者登録に必要な本人確認書類
顔写真ありで現住所が確認可能な本人確認書類
・日本国籍の方
運転免許証(写し) または マイナンバーカード(写し)※オモテ面のみ
・外国籍の方
特別永住者証明書(写し) または 在留カード(写し)
パスポートを使う場合
パスポート(写し) + 住民票(写し)
顔写真なしの本人確認書類しか用意できない場合
インターネット登録ができません。認定機関申請で手続きしてください。
必要書類:住民票(写し)+ 健康保険証(写し)
顔写真
建設キャリアアップカードに使われる顔写真のデータが必要です。
- 6か月以内に撮影したもの
- 正面・無帽・無背景
- サイズ:294×378ピクセル登録時にサイズを少し調整できます
・帽子、マスク着用
・顔に影ができている
・サングラス、色付きメガネをかけている
保険の情報
健康保険
健康保険確認書類

記号、番号、保険者番号、QRコードはマスキングをします。該当箇所に「付せん」などを貼り付けて、写真を撮ったりスキャナで取り込む。または取り込んだデータを加工して該当箇所が見えないようにしてください。
国民健康保険、国民健康保険組合、後期高齢者医療制度、生活保護者は適用除外です。
厚生年金保険
標準報酬決定通知書(技能者本人以外の個人情報はマスキングしてください。)
国民年金の場合は適用除外
建設業退職金共済制度加入証明書類
建設業退職金共済手帳
中小企業退職金共済制度加入証明書類
中小企業退職金共済手帳
簡易型で登録する場合に準備する資料は以上です。詳細型で登録する方は以下の書類もご準備ください。
労災保険特別加入(通常の労災保険とは異なる)
労災保険特別加入 加入証
学歴に関する書類(主任技術者で、指定学科を卒業した場合に該当)
卒業証明書
登録基幹技能者確認書類
登録基幹技能者講習修了証
保有資格
技能者講習修了証書
研修等の受講履歴
研修受講書類確認書類
表彰等の履歴
表彰確認書類
建設キャリアアップシステムの技能者登録の各ステップごとの入力内容
技能者登録には登録申請書コードを使用します。登録作業をするときは手元に用意してください。
氏名を入力します。
ミドルネーム、通称名、旧姓を入力する場合は「ミドルネーム入力する」をONにして入力します。
※通称名、旧姓を入力する場合は証明書が必要です。通称:住民票、旧姓:戸籍謄本
国籍名、在留資格コード、在留期間を入力
適宜入力します。
住所を入力します。
自宅電話番号、携帯電話番号、FAX番号のいずれかを入力します。
メールアドレスと、登録後に送られてくるカードの送付先の住所を入力します。
※カードは簡易書留で送付されるため、日中に受け取れる住所を入力してください。
緊急連絡先の電話番号と、連絡者の氏名と続柄(任意)を入力します。
事前に用意した各データを添付します。
- 所属事業者がCCUSに登録している:IDを入力すると情報が自動的に入力されます。
複数の事業者に所属している場合は社会保険に加入している事業者を選択してください。 - 所属事業者がCCUSに登録していない:必要情報を手入力してください。
- 所属事業者がない:「なし」と入力してください。
複数登録が可能です。主たる職種を1つ選択して適宜情報を入力してください。
情報は、「明細登録」ボタンから入力できます。
職歴や経験等を入力します。
加入状況に応じて健康保険の種類、保険者名称を入力し、確認書類のデータを添付してください。
適用除外の場合は、適用除外の理由コードと適用除外理由名を入力します。
加入状況に応じて情報を入力し、確認書類のデータを添付してください。
加入状況に応じて情報を入力し、確認書類のデータを添付してください。
加入している場合は、手帳の写しのデータを添付してください。
労災保険特別加入、健康診断の情報、学歴(主任技術者で指定学科を卒業した者)、登録基幹技能者の情報、保有資格、研修等の受講履歴、表彰等の履歴
申請内容を確認し、申請します。
登録料の支払い方法を選択します。クレジットカード、払込票から選択してください。
以上で技能者登録が完了です。
申請後に不備がある場合はメールが送られてきます。指示に従って不備のある箇所を修正してください。
登録後に建設キャリアアップカードが届きます。
行政書士は建設キャリアアップシステムの登録を代行できます
建設キャリアアップシステムの登録申請は、本業である工事に集中する貴重な時間を奪ってしまいます。
だからこそ、私たちは行政書士として、あなたのその「手間」を代行します。
煩わしい申請業務から解放され、本来の仕事に専念できる環境を手に入れませんか?
貴社の負担を軽減し、事業の成長をサポートします。
弊所は「CCUS登録行政書士」として登録代行の手続きができます。
ぜひ、お声がけください。
\ 無料で相談する /
まとめ
今回はCCUSの登録について解説しました。
事業者と技能者それぞれの登録があり、どちらも手間のかかる作業です。本業の工事に専念して収益を上げていただきたいと思います。面倒な登録作業は行政書士への代行をご検討ください。
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まとめ
今回は建設キャリアアップシステム(CCUS)の狙いや大まかな制度について説明しました。
建設産業をキャリア形成がしやすい業界にして、若者を定着させることが喫緊の課題とされています。国交相は建設キャリアアップシステムを対策の柱として強く推し進めています。今後は普及の流れが強くなっていくでしょう。
登録には自身で行う方法と代行する方法があります。行政書士も代行者として公に認められています。自身で手続きする時間がないという方は近隣の行政書士への相談をご検討ください。
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