建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
2019年から始まった技能者の実績や経験などを管理するシステムである「建設キャリアアップシステム」について。元請から頼まれたから何となく始めるというような方も多いかと思います。
ここでは建設キャリアアップシステムの狙いや制度の概要について解説します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
建設キャリアアップシステムは、CCUSとも呼ばれています。
これは、Construction Career Up Systemの頭文字を取って並べたものです。Constructionが建設や工事を意味するんですね。
現場ではどちらがよく使われているのでしょうか、、、。この記事では、CCUSと表記します。
CCUS導入の背景
他産業と同様に建設業でも、人手不足と高齢化が深刻な問題です。
日本の超高齢化社会が要因であることはもちろんですが、建設業が他産業と比べて就業時間が長いのに給与水準が低いことが原因とされています。
(厚生労働省 建設投資、許可業者数及び就業者数の推移)
建設業を魅力のある産業にし、若者が定着することを狙いとしてCCUSが始められました。
- 適正な就労管理(長時間労働・サービス残業の是正、社会保険加入の徹底)
→ 健全さ、時間当たりの効率を重視する若者にアピール - 人材の育成の意識を企業に根付かせる
→ キャリア形成がしやすく将来計画を立てやすくなる - 能力や実績に基づく適正な評価による処遇の改善
→ 努力が評価に結びつく
CCUSの流れ
CCUSの登録から利用までの大まかな流れを以下に示します。
事業者(会社)の登録を行い、その後に技能者(社員)の登録をします。技能者の登録が済むとカードが送られてきます。その後、事業者と技能者をシステム上で紐付けします。
主な登録情報
- 商号、所在地、業種など
- 保有資格、社会保険加入状況など
現場、工事内容などの工事の概要、契約情報を元請が登録。
工事に入る技能者情報(氏名、職種、職長や班長などの立場)を下請が登録
誰(勤め先、保有資格など)がどの期間工事に入るかを事前に決めます。
工事現場にカードリーダーなどの端末が設置され、技能者はカードタッチして就業実績を蓄積します。蓄積され就業履歴、保有資格、職長・班長の経験年数に応じて技能者のレベルが上がっていきます。レベルは1から始まり最大で4です。
この情報はシステム上に残るります。積み重ねた経験が明確になり、転職のときに能力や経験に見合った評価と処遇が受けられることが期待されます。
CCUSによる能力と経験の見える化
CCUS導入前は自身のキャリアを明確に示すことが難しい状況だったかと思います。CCUSの利用により工事の履歴や保有資格、マネジメント経験が見える化されます。まるでプロ野球選手が打率や打点、防御率などの実績に基づいて評価されるように、技能者が能力やパフォーマンスに応じて評価される状態を目指しています。
国土交通省が技能者のレベルに応じた職種ごとの賃金の目安を公開しています。以下はその一例です。
呼称 | 賃金目安 | ||
レベル4 | レベル3 | レベル2 | |
内装仕上技能者 | 554~867万円 | 486~811万円 | 438~720万円 |
基礎ぐい工事技能者 | 509~849万円 | 425~775万円 | 408~678万円 |
レベル別年収は、公共事業労務費調査において把握された技能者の実態を踏まえて、各技能者の経験や資格が評価された場合に相当するレベルに応じて、公共工事設計労務単価の算定と同等に必要な費用を反映した上で、年収額(週休2日を確保した労働日数:234日)を試算したもの。
建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表(令和5年6月16日 不動産・建設経済局 建設市場整備課)
定着には時間を要するでしょうが、この制度が基準となれば技能者のキャリアを適切に評価する会社に優秀な人材が集まることが予測されます。
CCUS利用しない事業者の採用はより厳しくなるかもしれません。
事業者の利点
ここまでは主に技能者に関する情報を述べてきました。事業者にとっては以下のような利点が想定されています。
- 元請が行う技能者の保有資格や社会保険などの情報管理の効率化
データがデジタル処理されるため効率的なデータ管理ができるようになります。 - 事業者の施工能力の見える化
施工能力の見える化により、優秀な人材が社内にいると会社の施工能力が高く評価される。
→ 元請から価格のみで選ばれることを防ぐ狙
まとめ
今回は建設キャリアアップシステム(CCUS)の狙いや大まかな制度について説明しました。
建設産業をキャリア形成しやすい業界にして若者を就業、定着させることが喫緊の課題とされています。国交相は対策のために強くCCUSを推し進めようとしています。おそらく今後もその流れは強くなるでしょう。
登録には自身で行う方法と代行で依頼する方法があります。行政書士も代行者として認められています。近隣の行政書士に相談してみると有益な情報を手に入れられるかもしれません。