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    工事請負契約書に記載する内容と契約時の注意事項を解説

    石野享
    いしの行政書士事務所 代表
    前職では医療機器メーカーで開発の傍ら薬事申請や業許可の管理に従事していました。

    そのときに許可の管理にかかる手間やストレスを強く感じていました。社会の基盤を支える建設業の皆様には書類作成のような雑務ではなく、工事に力を注いでほしいと考えています。本業に集中できるように当事務所がサポートします!

     工事を受注するとき、注文書と請書だけ或いは口約束だけで済ますこともあるかと思います。

     契約のたびにいちいち契約書を作るなんて面倒ですよね。しかし受注後に無理な値下げを求められたり、材料や機材を負担させられたりの経験がある人も多いのではないでしょうか。値下げ要求は業界の常識なので仕方ないと思う方も居るかもしれません。でもできれば無くしたいのが本音ではないでしょうか。このようなトラブルに対応するには、工事請負契約を締結することが有効です。

     今回は、工事請負契約書に定めるべき内容を示します。以下のような方はぜひご一読ください。

    • 工事請負契約書を急遽作らないといけなくなった
    • これから工事請負契約書を使って受注していこうと思う
    • 工事請負契約書について知っておきたい

    それでは確認していきましょう。

    目次

    契約書への記載が必要な内容

    工事請負契約書には以下の16項目を記載することが建設業法により規定されています(2024年12月現在)。

    • 工事内容
    • 請負代金の額
    • 工事着手の時期及び工事完成の時期
    • 工事を施行しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
    • 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
    • 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
    • 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
    • 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め
    • 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
    • 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
    • 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
    • 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
    • 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
    • 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
    • 契約に関する紛争の解決方法
    • その他国土交通省令で定める事項

     法令上これらの項目は契約書に必ず定める必要があります。

     そして元請負人は下請負人に対して上記項目のうち、②請負代金の額を除く全ての事項を具体的に提示しなければなりません。

     また①工事内容では元請負人は以下の事項を明示すべきとされています。工事に応じて内容を定めてください。

    • 工事名称
    • 施行場所
    • 設計図書
    • 下請工事の責任施工範囲
    • 下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
    • 見積もり条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
    • 施行環境、施行制約に関する事項
    • 材料費、労働災害防止対策、建設副産物(建設発生土等の再生資源及び産業廃棄物)の運搬及び処理に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

    参考:建設業法遵守ガイドライン(第11版)

     施工条件が確定していないなど正当な理由がないのに、元請負人が下請負人に対して契約までの間に上記事項に関して具体的な内容を提示しない場合は、建設業法に違反することになります。

    契約を締結するときの注意点

     工事請負契約を締結するとき、元請は有利な立場を利用して一方的に有利な条件で下請契約を結ばせると建設業法違反となる場合があります。特に以下の内容を取り決めるときは注意が必要です。

    請負代金の額を決めるとき

    下請業者に原価割れが発生するなど著しく低い請負代金で契約を結ばせた場合は、建設業法違反となる場合があります。もちろん契約後に元請業者が取り決めた代金を一方的に減額してもダメです。

    原材料の高騰などで原価割れが発生する場合に、下請業者から代金の変更の協議に応じない場合も法令違反となる可能性があります。

    工期を決めるとき

    元請人が発注者からの早期の引き渡しに応じるためなど、通常よりも著しく短い工期で下請業者に工事を行わせることを強いる場合は建設業法の違反となる場合があります。猛暑日を考慮した工期の見積もりを考慮に入れないなども該当します。

    工事期間中の設計変更など下請業者の責めに帰さない理由で工期を変更するときに、通常よりも著しく短い工期を強いるなどもダメです。

    参考:建設業法遵守ガイドライン(第11版)

     下請業者は上記のような不当な扱いを安易に受けないようにすることが必要です。しかしながら仕事がなくなってしまうなどの不安から、受け入れざるを得ないのが実情かと思います。余りにも悪質な場合は、公正取引委員会に相談する方法があります。

    契約書に貼る収入印紙

     請負契約書は印紙税の課税対象となる文書であるため、取引金額に応じた収入印紙を貼り付ける必要があります。貼り付ける収入印紙は以下のとおりです。

    スクロールできます
    契約金額収入印紙の額
    1万円未満非課税
    1万円以上100万円以下200円
    100万円を超え200万円以上400円
    200万円を超え300万円以上1千円
    300万円を超え500万円以上2千円
    500万円を超え1千万円以上1万円
    1千万円を超え5千万円以上2万円
    5千万円を超え1億円以上6万円
    1億円を超え5億円以上10万円
    5億円を超え10億円以上20万円
    10億円を超え50億円以上40万円
    50億円を超えるもの60万円
    契約金額の記載のないもの200円

    収入印紙を貼り付けるのは原紙のみです。コピーには貼り付け不要です。

    まとめ

    今回は工事請負契約書の記載内容や締結時の注意点を解説しました。

     法令上は工事請負契約書を作成して工事を請負うことが規定されています。元請業者は自社の都合だけで十分な協議をせず、下請けに無理な契約を強いることがないように注意が必要です。

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