工事経歴書の記入方法と注意点を詳しく解説|尼崎で建設業をサポート
工事経歴書の作成において注意すべき点や必要となる時期について解説します。工事経歴書は作成の機会が多いので要点を抑えて効率よく作業したいですね。
一緒に確認しましょう。
作成の概要
工事経歴書のエクセルフォーマットが用意されています。
兵庫県のエクセルはこちらからダウンロードできます(ページ中盤の「建設業許可申請書」の様式番号 第2号)。
このような様式です。↓
記載する項目が多くありますのでそれぞれ説明していきます。
1 建設工事の種類
取得している建設業の業種名を記載します。業種ごとに分けて作成しますので、複数の業種を取得している場合はそれぞれの工事について作成します。
2 税込・税抜の別
税込・税別のどちらで記載するかを選びます。経営事項審査を受ける場合は必ず、税別を選んでください。
経営事項審査を受けない場合は、税込・税別のどちらでも構いません。将来的に入札を検討されている方は、税別での作成に慣れていても良いのかもしれません。
3 注文者
法人の場合は法人名を記載します。
個人の場合は、個人名が特定されないようにイニシャルなどを記載します。吉田さんからの発注の場合、「個人Y 」などと記載。
4 元請又は下請の別
行った工事が元請工事であったか、下請工事であったかを記載します。
元請工事の場合は「元請」と記載
下請工事の場合は「下請」と記載
5 JVの別
JVとして工事を請け負った場合は「JV」と記載します。JV全体の請負代金の額に出資の割合を乗じた額または分担した工事額を記入します。
JVとして工事を行うのは、規模の大きな会社がほとんどで中小企業が該当することはほとんどないでしょう。
共同事業体(ジョイント・ベンチャー、JV)とは、建設企業が単独で受注及び施工を行う通常の場合とは異なり、複数の建設企業が、一つの建設工事を受注、施工することを目的とする事業組織隊のことを言います。(国土交通省サイト)
6 工事名
請負契約書等に記載されている工事名をそのまま記載します。工事名に個人名が含まれているときは、個人名をイニシャルに修正して記載してください。
吉田邸内装仕上工事 → Y邸内装仕上工事
7 工事現場のある都道府県及び市区町村名
工事現場の都道府県と市区町村名を記載してください。
8 配置技術者_氏名
9 配置技術者_主任技術者/管理技術者
9 配置技術者_主任技術者/管理技術者
配置技術者の氏名を書き、その人が主任技術者か監理技術者の該当する方に「レ」点を付けます。
専任技術者は配置技術者になれない?
配置技術者は原則として専任技術者と同等の資格や経験を求められています。専任技術者は営業所に常勤しているので、原則として専任技術者が配置技術者として工事現場に出ることはできません。しかしそれでは一人親方や少人数の会社などの一人しか専任技術者がいない会社は仕事を請け負えません。
生産性の向上を図るために、条件を満たす場合は専任技術者が配置技術者として現場に入っても営業所に常勤しているものとして扱われるという規定が設けられています。
・専任技術者の常勤する営業所で請負契約が締結された建設工事である
・工事現場と営業所が近い
・営業所と現場で常時連絡を取れる体制にある
・所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること(出向者や派遣社員などは注意)
・工事の専任を要しない監理技術者等であること
10 請負代金の額
年度内に受注して完成した工事の額を記載します(未成工事も含む)。
- ②の税込・税別に合わせて記載するように注意しましょう。
- 1件の請負契約を分割して複数の工事として計上できません。
- 新規許可業者は、ここに500万円以上の額は記載できないはずです。無許可業者の500万円以上の工事は業法違反となります(建築一式工事でない場合)。
記載する順番や数は後ほど詳しく解説します。
うち(PC、法面処理、鋼橋上部) について
・PC
土木一式工事について工事経歴書を作成するときプレスレストコンクリート構造物工事がある時に「PC」に丸をつけて、プレスレストコンクリート構造物工事に該当する請負代金の額を記載します。
(参考:PC、興亜建設株式会社)
・法面処理
とび・土工・コンクリート工事について工事経歴書を作成するとき法面処理工事がある時に「法面処理」に丸をつけて、法面処理工事に該当する請負代金の額を記載します。
(参考:法面工事、Con Maga)
・鋼橋上部
鋼構造物工事について工事経歴書を作成するときプ鋼橋上部工事がある時に「鋼橋上部」に丸をつけて、鋼橋上部工事に該当する請負代金の額を記載します。
(参考:鋼橋上部、テオ株式会社)
11 工期
年度内に受注して完成した工事の着工年月と、完成年月(未成工事は完成予定年月)を記載します。
12 小計
様式内(該当ページ内)に記載した工事の件数と、その完成工事高の合計を記載します。
13 小計のうち元請工事
様式内に記載した工事のうち、元請工事の完成工事高の合計を記載します。
14 合計
年度内のすべての完成工事(未成工事も含む)の件数の合計と、その完成工事高の合計額を記載します。
15 合計のうち元請工事
年度内のすべての完成工事のうち、元請工事の完成工事の合計を記載します。
作成の流れ
以下に兵庫県の記載要領に従って作成した工事経歴書のサンプルを示します。工事経歴書は、経営事項審査を受ける場合と受けない場合で作成方法が異なります。それぞれ確認していきましょう。
経営事項審査を受けない場合
業種(建築一式、内装仕上工事など)ごとに作成します。
完成工事高の額が大きい順に、元請と下請を分けずごちゃ混ぜに、それぞれの合計額や元請の額などを記載してください。兵庫県の場合は10件程度記載すればOKです。
都道府県によりローカルルールがありますので、詳細は申請の窓口にお聞きください。
工事の実績がない場合(設立直後の場合など)
工事の実績がなくても工事経歴書は必ず提出します。その場合は、「新規設立のため実績なし」などと記載します。
経営事項審査を受ける場合
経営事項審査を受ける場合は細かいルールがあり複雑です。以下に示す兵庫県の記載要領に沿って作成したサンプルをいくつか紹介します。
- 元請工事の完成工事について、請負代金(完成工事高)の合計額のおおむね7割を超えるところまで、額の大きい順に記載する。軽微な工事は10件記載すればOK。ただし、元請の完成工事の請負代金の合計が1,000億円を超えたらそこでストップ。
- 1で記載した元請工事以外の元請け工事と下請工事の完成工事について、すべての完成工事の 請負代金の合計額の概ね7割を超えるところまで、額の大きい順に記載する。軽微な工事については10件記載すればOK。ただし、元請の完成工事に係る請負代金の額の合計が1,000億円を超える場合は、それ以上記載しなくても良い。
- さらに、それに続けて、主な未成工事について請負代金の額の大きい順に記載する。
工事経歴書の作成は複雑で時間もかかります。普段から作業を意識して書類の分類や請負契約書の作成を工夫をすることが効率化に繋がります。
工事経歴書はいつ必要?
- 建設業許可の申請のとき
- 決算変更届のとき
- 経営事項審査申請のとき
決算変更届は毎年報告する義務がありますので、許可業者は必ず作成しなければいけません。
まとめ
今回は、工事経歴書の作成方法について解説しました。
工事経歴書は決算報告に必要なので毎年作成しますが、時間と労力がかかります。本業の工事に専念するためにも、代行業者である行政書士などに相談しておくとスムーズに進められるでしょう。